チ ル チ ル ミ チ ル





「おはやう」
「わざとらしい」
目の前で「酷い!!よよよ」と泣くのは我が友
「てか、自分でよよよとかいうの止めれ」
そう言うと今度は床に跪いてよよよと泣く
「服が汚れる」



少年アリス
     〜チルチルミチル編〜




そう注意しながら手を差し出せば
目の前の友はその手を握り返し立ち上がる
「おはよう」
やっと挨拶が返せた
「遅いなぁ」
友は笑いながら言う
「なぁアリス」
友は言う
なんだと答えれば
「今日の放課後は何をしている?」
友は問う
「飴食べる?」
聞けば友はYesと答える
そしてコチラもYesと答える
「では行こう」
さて何処に
「今日の放課後はファンタジィの旅路だ」
それは何


「帰りにアイスでも食べよう」
「それはイイ!!では蜂蜜ソフトを」
友は蜂蜜ソフトが好きである
それに関してはあまり共感は出来ない
どちらかといえば果物系の方が好きだ


授業はいつでも深緑の黒板とにらめっこである
勝負はいつもdrawだ
勝負は一向につく気配はなく
いつも人知れず戦い続けているのだ
敵はなかなかに手強い様である


もし黒板が文字通りに黒かったなら
黒板上を舞う白や赤や黄色
各色のチョークの粉はまるで宇宙を浮遊する星の様だろう


「こっちだアリス」
どうしてそんなに急ぐのか
そんなことを聞いても意味はない
それでも思わず聞いてしまうのは
「何処に行くのだい?」
僕という人間が
「もうすぐさ」
好奇心の塊だからか
「もうすぐってどのくらいだい?」
それとも全ての人間が
「もうすぐったらもうすぐだよ」
好奇心の塊だからか

「さあ着いた」



チルチルミチル

目の前に広がるのは大きな
目の前に広がるのは淡い
目の前に広がるのは
腕を精一杯広げて僕らを抱き締めるかの様な
大きな豊かな桜の木

散る散る、見、散る



白い桃色は散り行き
僕らの頭上に絶え間なく降り注ぐ



チルチルミチル

胸の中に広がるのは小さな
胸の中に広がるのは匂い
胸の中に広がるのは
香を精一杯広げて僕らを誘い込むかの様な
小さな艶やかな桜の花弁

散る散る、満ちる



「どうだろうアリス」

綺麗だろ





「団子の方がよかったかなぁ」